祈り

どうかあなたの行く道が、歩きやすい道でありますように
でもあんまり平坦過ぎても退屈しちゃうだろうから、程よくスリリングでありますように

どうかあなたの飛び立つ空が、気持ちよく晴れ渡っていますように
でもあんまりカンカン照りでも焼けちゃうだろうから、それなりに風やら雲やらがありますように

どうかあなたのこの先が、めいっぱいの、それはもうめいっぱいの幸福で満ちていますように
(2021-09-10)

AM4:20

寝たくはないけど、起きてるのにも飽きた夜。

好きでも嫌いでもない配信者が、まだ何かやっているらしい。
見てやってもよかったけど、視聴者五十分の一になるのがなんとなくシャクだった。

新聞配達のエンジンが聞こえる。

玄関で寝ている親父を跨いでコンビニに行こう。
何を買うでもなく、何を立ち読むでもなく、
ただただ人工の光を浴びに行こう。

あいつは元気でやっているのかな。
楽しく幸せにやってるといいな。
こっちは楽しくも幸せでもないけど、体だけは元気だよ。
全くヤになるぜ。

なかなか、夜は明けない。
(2021-05-24)

ヨイドレ

歌舞伎町三丁目の居酒屋で
酔ったおっさんが騒いでる

安酒片手に、お通しを肴に
なんだかんだと叫んでる


この頃 世の中は話にならねぇバカばかり

網の上で金をねだってる政治屋気取りや
他人の色恋に首突っ込んでる阿呆共や
芸術を数字でしか測れねぇノータリンの群れや
見てくれやら前髪やらが全ての"空っぽ"たちや

どこもかしこも話にならねぇバカばかり

こんなコトをこんな所で話してるこんなオイラよりかは
いくらかマシなんだろうけど

惚れた女に逃げられて
青春捧げた夢から逃げて

つまらねぇ・面白くねぇが口癖の
くだらねぇオッサンになっちまった
まァオイラはハナっからその程度だったってことさね


酔っているというより酔わされている
酔いどれというより酔い奴隷

今宵も踊る酔い奴隷
(2021-05-23)

思い出

「自殺ってなんかポジティブだよな」なんて、彼がいきなり言うから吃驚しちゃってさ。
ちょっと躊躇したけど、意を決して「なんで?」ってまっすぐ訊いたんだ。
「いやまぁ、なんとなくかな。」
なんとなく自殺はポジティブとか言う彼。それ聞いてなんとなくノスタルジィな私。
「その人は自殺しようって決心したワケでさ。その決断力があれば、なんだってできちゃうんじゃあないかなぁ」
ぽつりぽつりと彼は話してくれたよ。
私はなんて返せばよかったんだろう。
私はなんて返せばよかったんだろう。
「それでも私は、生きててほしいよ」だなんて、そんな我が儘言えなかった。
そんな我が儘、言えばよかった。
(2021-05-01)

声明

我々は紫色だ。
胸にこびりつく大量の青と、
今にも消えちまいそうなほんの少しの赤とでできている。

ブルーばかりで、春の気配なんて微塵もない青春。
傷つかなければ観測できない、生きてんだか死んでんだかよくわからない血液。

我々は紫色だ。
どっちつかずの半端モノ。
我々は不安定な紫色だ。
(2021-02-02)

COLOR

僕の血は何色なんだろう
普通は炎の色らしい
でも僕に情熱は無いからな
さめた冷たい色だろう

僕の血は何色なんだろう
普通は朝陽の色らしい
でも明日が怖い僕だから
昨日の夜雨の色だろう

僕の血は何色なんだろう
みんなが羨む色ならば
彼女の好きな色ならば
今より幸せだったろう
(2021-01-26)

マキ

マキには嫌いなものがある 物理の分厚い参考書
マキには嫌いなものがある 現文の加藤のネクタイ
マキには嫌いなものがある 覚えが悪い自分のアタマ

マキには嫌いなものがある 衣のへたったエビ天ぷら
マキには嫌いなものがある 気が抜けた昨日のコカ・コーラ
マキには嫌いなものがある 宙ぶらりんな自分の夢

涙は心に落っこちて 日に日に湿気って火が消えた

マキには嫌いなものがある 楽しめていた去年の自分
マキには嫌いなものがある あの子にひどいことした自分
マキには嫌いなものがある 独りは嫌だと言えない自分

そして何より 転んだまんま起き上がれない 今日の自分が一番嫌い
(2021-01-11)

不完全燃焼

きっと僕は死ぬまでずっと
一酸化炭素を吐き出しながら
このままくすぶっているんだろう
(2015年ごろ)

腐葉土

色々、嫌なことがあってさ
思い出したくない思い出がたくさんあってさ
今までの泥々したものが、心と魂の隙間でグチャグチャに混ざり合って滲み合って

そうしてできた腐葉土の上にしか、
パレットに無い色の花は咲かないんだろうな
(2019-01-23)

待ち合わせ

待ってるからさ、待たせてくれよ。
何時までも待つから、待たせてくれよ。
誓いを果たさせて。
(2020-01-27)

宝石の眩い光と、ナイフの重鈍い光とに挟まれて、精神が眩暈を起こしてる。

つまるところこれは闘いなのだ。
勝ち負けなんかない、負けと敗北から成る闘いなのだ。

私のことなんかもう忘れてるだろうから自己紹介をさせてくれ。
アイ・アム・千切れ雲。北の空にふらふら浮いている、とびきり惨めなヤツさ。
(2020-01-27)

落描き

ため息で曇った硝子に夢を描く

こんな風に苦しい夜は
君のことをふと想ふ

どうか君は僕のこと
想わないで居てくれ給へ
(2017-06-28)

Attitude

ポケットの中は何もない
晴れとも曇りともつかない空模様
俺の口からは一酸化炭素しか吐き出されない
どうにもならない不完全燃焼

ベレッタの銃口を咥えている
右やら左やらにダイヤルが回ってく
俺の脳みそはラヂオ基地局にヘルツが合う
少しずつ上がるビジョンの解像度

いつかの・どこかの……それは別の宇宙かもしれないという意味で
実在人物の苦悩が基地局から送信され
何の因果か俺の脳がそれを受信してしまう
俺は作っているのではなく見ているのである
愛すべき彼らの戦いに決着がついてほしいと願いながら
誰かが決着をつけてくれるだろうと投げ腐りながら

ポケットには穴が開いている
ベレッタは発砲準備万端
基地局からビジョンを受け取り・受け流し
俺の口は一酸化炭素ばかり吐いている
(2020-12-07)

Motivation

あの日言えなかった言葉
あの時渡せなかった手紙

忘れてしまった思い出
忘れたくなかった人

君と共に歩けなかった夏の朝
一人泣きながら帰った雨の夜

KIMOCHI

消え入るように砕けたそれは
朝の渚の海月のようで

タラタラ

告白は直接がいいと言ったのに
別れ話はメールでなんだね

もしもこいつと結婚したらなんて
馬鹿な妄想だったようだね

ひそかに
次の誕生日プレゼント 探していたのになぁ

笑ってよ

あの日の記憶 遠くなっていっても
完全に君を忘るるなんて日は来やしないんだろう

あの日の言葉 風がさらっていっても
心の中をぐるぐる回り続ける 虚しさだけ

あの日のように 笑い合えないから
永遠に君に会えない、いや会いたくない 街ですれ違うだけ

ひそかに
自分の苗字と 君のとを 入れ替えて遊んでた

あの日のように 笑い合えないから
永遠に君に会えない、いや会いたくない 街ですれ違いもせず
(2016-12-22)

八月三十日

秋の匂いにつられ
急いで花火を買った
去り行く夏に「さよなら」代わりの線香花火

秋の匂いにつられ
ビーチサンダルをしまった
予定だけ立派にたった海水浴

生活

頑張った分だけ 成長したらいいのに
努力した分だけ 前に進めたらいいのに
変わりたい自分に すぐ成れればいいのに
悪癖は魂にでも 染み付いているのか

あーあー 今日もまた 昨日までのダメな自分だったなァ
明日からはもっとかっこよく生きるんだ

あーあー 今日もまた 昨日までのダメな自分だったなァ
明日もどうせまた 変われずに終わるんだ
(2016-10-12)

ナミダの唄

泣きたいときには 素直に泣けばいい
涙の出し方を忘れた 哀れな大人になるな

人知れず流した 涙のダイアモンド
値打ちは 金には代えられない 無限大なのさ

悲しみ7割 幸せ3割
この世の黄金比は変えられないけど

涙のそのあとに 無理矢理笑えれば
明日も生きていける そんな気がしてる
(2017-01-11)